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MailMagazine:ほんとうの佐川急便  Vol.9 集荷
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2001年4月20日配信配信  Vol.9 集荷

新人の頃、いちばん戸惑ったのが集荷でした。

配達は到着した荷物を順番に「やっつければ」終わります。
コースに慣れ、お客様の名前で配達できるようになれば (そうならなければ配達は終わらないけど・・・)あとは努力次第、どうにでもなります。
言い換えれば配達はドライバー中心に仕事を進められるのです。

しかし、集荷は顧客中心となるところが多いのです。
荷上がり(*1)が遅くなったり、いきなり「爆発(*2)」したり、思いもよらない集荷依頼があったりで日々集荷状況は変わります。

コースを担当するようになって2ヶ月。
配達は何とか13:00頃にめどが付くようになったものの、(といっても本来は12:00までに必着)その間の集荷は先輩任せ。そろそろ先輩の視線がキツクなってきました。

東京佐川(*3)には関東地区、東京都内を当日配達できるサービス、商品名「関東即配便」「都内即配便」、通称「即配」があります。
関東即配(以下関即)は群馬、栃木、茨城、埼玉、千葉、神奈川の各県、都内即配(以下都内) は東京都内への当日配達が可能です。
関東即配の電話受け付け締め切りが10:30。都内即配の電話受け付け締め切りは11:30でした。

当日配達の荷物を乗せた大型トラック(以下大型)は各配達店に向けて関即なら11:00、都内は12:00に出発してしまいます。
それまでに一旦上がり(*4)に荷物を預けなくてはなりません。

無線で上がる時間を待ってもらうことはできるのですが、この役目、一旦上がりは先輩が担当することが多く、(つまり配達が少なく、必ず11:00,12:00に終わる楽勝コース)上下関係が厳しい佐川では待機してもらうのに一苦労(配達が終わらないから集荷してくれなんて口が裂けても言えません)。

当時はまだ携帯電話を持っているドライバーも少なく、本部からの指示を確認できるのはトラックに装備されたプリンタ(*5)のみ。
しかし、配達に追われる新人がプリンタを時間毎に確認するのは不可能に近い。当然、新人だからと集荷漏れが許されるわけがありません。

本部からの送信、受信の時間差が約10分程なので、10:40,11:40毎にプリンタを確認すれば集荷漏れは防げます。
そこで上司は隣のコース担当の先輩に私のコース客の関即、都内の確認を「させていた」ようです。

当時は3ヶ月たてば一人前。言い換えれば、3ヶ月過ぎたら先輩は面倒を見ない、全ての業務に責任を持ちなさいということです。

ある日突然、「おい、いつまで新人のつもりで甘えてるんだ?いいかげん即配の確認ぐらいできるだろ!」と先輩に言われました。

私の担当コースで関即を発送してくれるお客様が先輩の「負担」になっていたようです。
実はこの即配、発送費がハッキリ決まっていませんでした。当時のパンフレットを見る限りでは規定運賃。

しかし、佐川ではコース内のことはドライバーが「責任者」。「同じ商品」なのに請求金額はドライバー次第。
お客様の契約運賃で発送、トップ便の運賃を適用、規定運賃で発送と担当ドライバーにより請求金額がバラバラ。
東京佐川では貰える所からは貰ってしまおうという空気が満悦していました。

この先輩は即配を自コース内では契約運賃で発送していたので、忙しい割に売上にならないと嫌気がさしていたようでした。
私は歩合がないからこそ助け合えると思っていましたが、現状は歩合制でないならよそのコースには関わらない。
これがドライバー同士、暗黙の了解のようでした。

配達の合間にプリンタを確認する、こんな簡単なことがなかなか徹底できません。
まだ午前中に配達が終わらないと焦りが私にあるからでしょうか。時間を上手く使うことができません。

例えば、9:00から配達を始めて4件目の配達が10:25に終わっても、次のビルへ配達に行けばトラックに戻れるのは11:00過ぎ。 同じビル内ならまとめて配達をしたい。
効率が良いのは当然、お客様を差別するようなことはしたくない。
出荷の可能性があるだけの時間ために配達を15分も無駄にして良いのか?

配達と集荷のジレンマ(大袈裟?)に悩み先輩達に相談しました。ところが先輩達からは予想もしなかった言葉が返ってきました。

「ばかだなぁ、客を教育するんだよ。お前は何時に(即配を出すお客に)配達してんだ?配達順を変えて(即配)締切時間を配達時間にしちゃえよ。そうすれば二度手間が省けるだろ!」

ええっ?ってことはお客様に嘘の締切時間、つまり自分の都合に合わせた締切時間を教えるの?そんなことしていいの?

「俺なんかはさ、もともと即配の営業なんかしてねぇもん。多分、このコースの客は即配なんて知らねぇだろうな」

何それ?あんたアンタそれでベテランドライバーかい!?冗談でもそんなこと言えないよ。
この先輩は特殊なんだ。そう考え直して同じ係の他の先輩に聞いてみたものの、返答は似たり寄ったり。

私は営業職が初めてだったので先輩達から開口一番にでる言葉、「客を教育しろ」を危うく丸呑みしてしまうところでした。

こんな私を救ってくれたのは多くのお客様方でした。

初めて配達をした日から迷惑かけっぱなしにも関わらず、「最近配達が早くなったね、がんばってるね!」と優しい言葉をかけてくれたS商事の課長。
「いつも一生懸命だね。君を見ていると元気をもらえるよ」と励ましてくれたHの社長。
半人前の私に温かい声援を送ってくれたのは同僚や先輩達ではなく、何と迷惑をかけているお客様でした。

現状を恨んでも何の解決もしない。それより現状をいかに有利にするかを考えよう。
幸いドライバーはコース内においては社長。私のコースは「特別」でかまわない。
私のお客様には私にしかできない最高のサービスを提供しよう。

問題は先輩や同僚、会社の方針ではない。現状に甘えてしまう自分が最大の問題なんだ。
江ノ島研修で城東店店長が言った言葉、

「お前達を救ってくれるのはお客様だけだぞ。佐川が君達を救うことはない!」

この言葉を少しだけ実感できたような気がしました。

佐川では人に頼れない、甘えられない、問題は自分で解決するしかない。

この日以来、東京店2課が求める「一人前のドライバー」への道のりが始まりました。というのも他の課は全く違う世界だったからです。
東京店では全て「課長」の裁量次第、同じ問題を起こしても処分が全く違うことは当たり前のようにありました。
「課」が違うと全く違う会社と同じでした。まあ、当時は知る余地はありませんが・・・。

集荷に関してはまだまだ裏話があります。続きはまたの機会にしましょう。

*1 荷上がり=荷物が発送できる状態になること
*2 爆発=集荷の際、荷物が予想以上にあることの通称名
*3 東京佐川=当時はまだ独立採算制、東京佐川急便が正式名称でした。「東京佐川事件」で有名になった「渡辺社長」を現場事務所で2,3回「見かけた」ことがあります。
*4 一旦上がり=担当コースを離れて会社に一旦帰社すること。発送締め切り時間が決まっている地域や関即、都内、大量出荷など必要があれば帰社して荷台を空にしてしまう。東京店の場合、荷おろしの待ち時間等を考えると往復で1時間30分程。その間、コースは「無人状態」となってしまうのでなるべく上がりたくない、が本音。
*5 プリンタ=トラックに装備された営業道具のひとつ。MCM無線経由で本部が送信した内容をFAXのように受信、印刷する。送信されるのは電話受付時刻、顧客名、担当者、簡単なコメントなど。当時の文字はカタカナでしたが、現在はデジタル無線機に変わり漢字を印刷できるようになった。

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